充電不要の強みを活かせるか「Matrix Powerwatch2」
スマートウォッチの種類
スマートウォッチと聞くと、多くの人がApple Watchを想像すると思う。実際、相当に売れているようだ。
Appleのスマートウォッチ「Apple Watch」の推定出荷数が、SwatchやROLEX、TISSOT、TAG Heuerなどスイスの時計ブランドすべての合計を上回ったとの調査結果が発表された。
ところで、現在スマートフォンと何らかのやりとりが可能な時計としては、
- Apple Watchのように単独で通信機能も持つような高機能タイプ
- GPSや心拍数機能搭載、日々の歩数やスポーツ、睡眠のトラッキングなど、記録を重視するタイプ
- 2.に近く、ある程度のトラッキングが出来るが、アナログ時計をベースに通知を振動や小さいインジケータで知らせるようなタイプ
細かく見ればもっと分けられるけど、大まかにはこんなところかなと思う。Amazonで売られている安いものは、ほとんどが2に該当すると思う。
結局のところ、目的に合わせて選ぶわけだけど、自分は基本的に以下を大事にして決めてきた。
- 通知が文字で確認できる
- 時計が常時表示されている
- 毎日充電しなくても良い
Pebbleとの出会い
そんなとき、一つの製品が目に止まった。Pebbleだ。
Pebbleは、Pebble Technology Corporationが開発した製造中止のスマートウォッチです。資金調達は、2012年4月11日から2012年5月18日まで実行されたKickstarterキャンペーンを通じて行われ、10.3百万ドルを調達しました。当時、Kickstarterの歴史の中で最も資金提供されたプロジェクトでした。Pebbleは2013年1月にKickstarterバッカーに時計の出荷を開始しました。[17] Pebble時計をAndroidおよびiOSデバイスに接続して、通知とメッセージを表示できます。
時計は常時表示され、通知も見れて、バッテリーも持ちがよい、ということですぐにKickstarterで支援し、無事に受け取れた。この後、Pebble Timeという次のモデルも発表され、結構長くPebbleを使い続けた。画面デザインを入れ替えたり、ユーザーがアプリを作って公開できたりしたため、ファンも多かった。
Pebbleの中止とXiaomiへの移行
しかし、Pebble2を発表した後、なにやらゴタゴタし始めた。結果的にPebbleは倒産となり、Fitbitが同社を買収した。後にFitbitからFitbit Versaが発売されるに至ったが、ディスプレイの方式を変えたため、時計が常時ではなくなってしまった。
そこで、目をつけたのがXiaomiのAmazfit bipである。外見は某リンゴ社のスマートウォッチそっくり(付けているときに何度も間違われた)だが、常時表示でバッテリーの持ちも公称45日、実際に使っていたときも相当持ちは良かった。Pebble2と言っても過言ではない出来であった。唯一不満があるとすると、時計単体でアラーム時刻の設定ができないくらいのことであった。
AMAZFIT A1608 Bip心拍数モニタースマートウォッチグローバルバージョン(Xiaomiエコシステム製品) | Gearbest 日本
ジェネリックApple Watch?XiaomiのAmazfit Bipを5000円で買ってみた│世永玲生の電網マイノリティ - Engadget 日本版
しかし、ある時バンドが切れてしまい、しばらくはミラネーゼループのバンドを購入、交換して使っていた。でもせっかくだし新しい時計にしようと、同じXiaomiのAmazfit Stratos2を購入した。BIPと比較し、全体的にレスポンスが良くなったこと、アラームが単体で設定可能になったこと、見た目の良さからビジネス用途でも十分使えること、もちろん常時点灯なことなど、不満はほとんどなかった。唯一の不満は、BIPの驚異的な電池持ちに対し、5日程度しか持たないことであった。一度BIPの電池持ちに慣れてしまうと、5日でも頻度高く感じてしまう。一応その後にAmazfit GTRも購入してみたのだが、時間を見るために腕を捻る必要があるのは、何か作業しながらの場合は難しいことも多く、結局売ってしまった。
AMAZFIT Stratos / Pace 2 スマートウォッチ国際版(Xiaomiエコシステム製品) | Gearbest 日本
AMAZFIT GTR 47mmスマートウォッチ24日間のバッテリー寿命 5ATM防水国際版(Xiaomiエコシステム製品) | Gearbest 日本
充電不要という時計の存在
そんなとき、Matrix Powerwatch2の存在を知った。体温と気温の温度差を熱電素子で受けて発電し、それをエネルギー源としてスマートウォッチを動かそうというものである。(実際には表面に太陽電池も設けられている。)
Smartwatch Powered by You - MATRIX PowerWatch 2 | Indiegogo
熱電素子自体は別に新しいものではなく、熱起電力から温度を測定する熱電対や、この素子に電気を流すことで、素子のある面の熱をもう一面に移動させるペルチェ素子としても知られている。最近では工場で分散設置されたIoTデバイスの電源としても検討されている。
熱電素子(ねつでんそし、英: thermoelectric element)とは ゼーベック効果、ペルティエ効果、トムソン効果といった、熱と電気を関係づける現象を利用した素子の総称。応用例に熱電対、電子冷却などがある。
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%25E7%2586%25B1%25E9%259B%25BB%25E7%25B4%25A0%25E5%25AD%2590
実はMatrixは初代Powerwatchで既にこの技術でスマートウォッチを販売していたが、お世辞にも機能が十分とは言えなかった。そこに丁度新しいモデルがIndiegogoでクラウドファンディングを開始したとのことで、すぐに申し込んだ。これが2019年2月のことであった。
届かない時計、そして
当初の成功した場合の出荷スケジュールは2019年6月だった。ただ、こう言ったものは往々にして遅れるものであり、当然6月には届かなかったが、あまり気にしていなかった。しかし、その後「もうすぐ出荷するよ!」と言いつつ出荷されない蕎麦屋の出前状態となり、挙句出資者に届く前にebayやAmazonで販売が開始されるなどし、プロジェクトのコメント欄は届かない!いつくるんだ!という声で溢れかえった。(恐らく資金的に厳しくなって、一般向けの販売を行う必要があったのでは。)
実際には少しずつ届く人が現れていたが、届いた製品が不具合だらけで使えない!との声があがり、コメント欄は地獄の様相となっていった。
しかし、2020年の1月に「1月の終わりには全部出荷するよ」と発表され、相変わらずみんな不信感を持っていたが、徐々に届く人が増え、自分の元にも2月の初めに無事に届いた。
Matrix Powerwatch2レビュー
さて、やたらと長い前置きになってしまったけど、使い勝手をレビュー。まず見た目。
画面は常時表示であり、明るい太陽の元でも非常に見やすい。外見はチープであると言う人もいるが、製品の特徴からしたらこんなものかなと思う。
機能はまだ開発中と言ってもいい状態で、最近になってようやく手首を捻るとバックライトが点灯する機能が付いた。(それまでは右下のボタンを長押し。)ただ、ボタン操作していても容赦なくバックライトが消えるため、夜の使い勝手はどうしようもなく悪い。ボタンを押したときには点灯するようにしてほしい。
アクティビティトラッキングはまだ試していないが、コメントではGPSを全く補足しないといった問題が挙がっている。
通知は問題なく表示され、日本語も絵文字以外は問題ないが、一括で既読にする機能がなく、一個一個詳細を確認していかないと、通知の未読がありますマークが消えてくれない。
他にも現時点ではアラーム機能が実装されていない、歩数や心拍数がまともに表示されない、などの不具合が残っている。それと、ペアリングが解除され、再接続に四苦八苦するといった問題が残っている。(ちなみに、時計を再起動し、アプリでペアリング解除した後にスマートフォン側を再起動し、再度ペアリングすることで復活できた。)
ところで肝心な発電機能はというと、今のところ順調に動いている。アプリで充電量を確認できるけど、日光に当たっているときは太陽電池からの発電量が増えるし、寒いところにいた時は熱電素子からの発電量が増えている。(熱電素子は体温と外気温の差が大きい方が発電量は大きくなる。つまり、夏は発電しにくい。)
残念ながら、時計側がどのくらい消費しているかという表示がないため、収支のバランスが不明だが、3日ほど使ってバッテリーマークは全く変化していない。おそらく発電は十分できているのだろう。
この時計は買いか?
さて、ここまで買いたけど、正直今の時点ではお勧めできない。自分の場合は早期申し込みで300ドルくらいだったけど、今の販売価格は6万円近くであり、発電できるという機能に相当の価値を見出せないと、価格とマッチしないだろう。また、機能の不具合も多く、それが改修されるかどうかも分からない。出荷が落ち着き、徐々に混乱も収束し、今後は機能も良くなっていくと思われるけど・・・。
自分もしばらく使っていくけど、不具合が多発するようになったらAmazofit Stratos3に乗り換えようかなと思う。